自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
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それはまだ武士が、いくさのない頃には田んぼを耕し漁船を操り、ひとたびいくさとなれば漁船に壁板を張り巡らし矢を積んで出かけていた頃のこと。いくさに出かけて首を稼げば、領地が増えて家族を養える、血生臭くものどかだった頃のこと。

そんな暮らしがずっと続くと思っていた、里見家の家臣金丸強右衛門を中心に、豊臣秀吉の天下、徳川の治世と、全国統一がなされ武士のあり方が目まぐるしく変わっていった、その流れに翻弄された武士たちの姿を描く連作短編集。

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時代劇のかたちを借りたサラリーマン小説、ファミリードラマは近ごろ増えていますが、その中でも出色の面白さです。

主人公の強右衛門はそれなりに有能な侍です。が、余りに激動の時代を生きたために、活躍も虚しく時代に流されたり、逆に失敗したのに運良く時代の波に乗れたり。秀吉の治世になって、今までの主君の上にさらに「会ったこともない主君」が出来て物資や労働力を吸い上げられるとまどい、都会といえば岡山と思っていたのが江戸へ出てみたときの驚き。しかしまごまごしてばかりもいられない、いくさのなくなった世の中、戦って勝てば豊かになるわけではなくなってしまった世の中で、どうにかして妻子を養わなくてはいけない。そんな中で強右衛門が見つけていく解決策・妥協策が鮮やかだったり切なかったり、といったところで各短編の味わいのバラエティが出ています。

そしてお約束ですが、家庭に帰ると女房の尻にしかれ老母に頭が上がらず子どもらにいまいち懐かれない「お父さんはつらいよ」設定が楽しい!特に毎回挿入される夫婦喧嘩からの嫁姑バトルは笑ってしまいます。仏壇に向かって独り言、のていできっつい嫌味を言う強右衛門のお母さんがいい味出してる!

強右衛門の二人の息子も話が進むにつれ成長していくのですが、この二人のいい意味悪い意味両方での親の期待の裏切りっぷりがまた読み応えありです。「武士になりたくない、出家したい」と言い出したお兄ちゃんが、その性格のおかげで活躍しちゃうシーンとか、もう、大好き。

で、最終ページ。いきなり泣かされました。これは私が年とったってことなんだろうなあ。法事のシーンなんですけどね、…いや、言うまい言うまい。悲しいわけでもない、感動するような大きな出来事があるわけでもないのに、じんわり泣けて涙が止まりませんでした。

ご両親が還暦超えたくらいの、私と同世代の方におすすめしたいです。あと、荻原浩のファミリーものが好きならきっと好き。

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