自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
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35歳、プロの漫画アシスタント、既婚、子どもなし、犬あり。
漫画家になることも諦めていない。
だけど、睾丸に突然癌が見つかった。
「手術自体は簡単」「生存率は90%以上」と言われ、入院したものの…

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結婚してる人、パートナーがいる人、パートナーがいたことがある人は絶対外で読んじゃダメ。うっかり涙が止まらなくなります。

あまり題材として見かけない「精巣腫瘍」の闘病記なので、そして表紙が可愛らしいので、病気の特殊さにスポットを当てたライトなエッセイ漫画かと思って読んだのですが、とんでもない。抗がん剤治療の辛さ、闘病うつ、患者同士の付き合いの難しさ、看病する家族の苦しみ、そういったものをきっちり描くことで、素晴らしい夫婦ものに仕上がっています。闘病記というよりも夫婦の記録。少なくとも私にとっては。

漫画がとても上手いです。エピソードではなく、絵で泣かされました。それも、劇的なシーンではなく、一人になったときに思い出す奥さんのふんわりした笑顔とか、同じ病室の元気なおじさんのふとした空虚な表情とか、そういうものに、登場人物の人生が詰まってて、さらに作者のその人への愛情・愛着まで伝わってくるんです。

ちなみに奥さんの笑顔のコマは33ページなんですけど、そこからあとがきまでずっと泣いてました。泣きすぎです。でもこの奥さんがほんと良くって、作者が治療のつらさのあまり奥さんに「もう来るな!」と八つ当たりしてしまうエピソードがあるんですけど、それに対して数日後に奥さんが言うことが、もう。絵で泣かされたあとにエピソードでも結局泣かされて、それで、泣きっぱなしです。

で、病気そのものが全然本筋に関わっていないかというと、比較的生存率の高い癌だから病棟の雰囲気がやや明るめであったり、だけど生殖機能に関わっているから夫婦の問題でもあったり、やっぱりこの病気だからこそこの作品に仕上がるわけで、絵・エピソード・テーマがしっかり組み合ってるんですよ。なんて偉そうに分析めいたことを言うのはやだなあ。とにかくすごく良いから読んで、でも外で読まないで、と言いたい。

このかたちに仕上がるまでにだいぶ苦労されたというようなことも描かれていますが、ほんとに、リアルを失わず、真情が詰まっていて、だけど感傷的にならず、適度に笑いもあり、かといって笑いでごまかさず、当事者でありながらこのバランスにまで持っていくのはどれだけのことだったろうと思います。

Amazonのレビューで「これを読んで結婚したくなった」と書いている方がいらして、それってとても素敵なことだなと思いました。籍を入れる入れないに関わらず、人生のパートナーを持つということは、自分の家族を自分で選ぶという特別な体験ですよね。

おすすめです。

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