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自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
高度成長期、世田谷から千葉の海べりに引っ越してきたある一家の
三男の視点から描いた連作的長編。
父が死に、兄が結婚し、母は陽気になり、主人公はゆっくりと成長していく。
その風景にはいつも犬がいた。
三代目の犬チヨが死んだとき、主人公の目に映っていた家族とは。

椎名誠は、ノンフィクションは何冊か読みましたが、小説は初めてです。
自伝的小説というだけあって、不思議なリアリティがありますが、
一方で千葉の海にほど近い猟師町の不思議な風俗や幻想的な海の風景などが
うまく織り交ぜてあり、幻想小説のような側面もあります。
一章が大体短編一本くらいのボリュームで、章と章のつながりがゆるやかであるため、
短編集を読むような感覚でするっと読めます。

何がすごいって、比喩表現がすごい。独特です。しかもちゃんと主人公の、つまり子供の目線。
たとえば、まっすぐな道を表現するのに、「大人のように力強く」まっすぐ延びている道、と
書かれています。
ああそうだなあ、子供の頃って、大人は力強くて迷いがなく見えたなあ、と思いました。
海の波が泡立って不気味な様子を表すのに、「巨大な舌」と表現します。
大人ならいろいろなモンスターだとか、たくさん例えるものを知っているわけですが、
子供は身近なものしか知らないから身近なものに例えるんですよね。

結論のあるお話ではなく、大きな出来事は起きるけれどもそれが主題ではなく、
ただ淡々とある一家のある時代を切り取って描いています。
(だから文庫のあらすじのところに「父が死に、兄が結婚し」なんてあらすじを載せてしまえる
わけなんでしょうね。普通だったらひどいネタばれになるところです。)
そういうのが好きな方にはおすすめです。
「犬の系譜」と言いつつ、犬とのエピソードはそんなに多くないので、「犬のお話が読みたい!」
と思って読むとがっかりするかも。
もう新刊では出回っていないようなので、図書館などで見かけたら手にとってみてください!

【2009/09/19 08:39】 | おすすめ/本
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