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自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
ある作家が「僕の絶望が魚だったら」という一文で始まる
小説を書いた。
十数年後、あるロックバンドがそれを歌にした。
さらに十数年後、世界が救われた。

史上最大かつ最もささやかな「風が吹いたら桶屋が儲かる」
式冒険物語である表題作を始め、奇縁が生む奇跡を描いた
短編集。

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あらすじにしてしまうと、陳腐だったり荒唐無稽だったり。
でも、読んでみるとこの上なく面白い。
そんな小説が好きです。

この一冊には、そんな小説が二本も入っています。
短編集なので、伊坂幸太郎入門編としても最適。

村上春樹的味わいの「動物園の夜」、「犬神家の一族」
現代版といった雰囲気の「サクリファイス」もそれぞれ
面白いのですが、やはり出色の出来なのは「フィッシュ
ストーリー」と最後に収録されている「ポテチ」。

「フィッシュストーリー」は、あるバンドが解散直前に
発表した同名の曲が、曲の意図したところとは違うかたち
で、発表から何十年もたって世界を救う、という壮大な
話です。が、そこに至るまでの経緯はあくまで人と人の
関わり。全体の壮大さとディテールの日常性の対比が
とても面白いです。ラストはすべての複線がつながって
「おおー」と唸ってしまいます。

「ポテチ」はとぼけた空き巣とその彼女のコメディタッチ
の冒険譚。あだち充「タッチ」を読んで本気で号泣する
空き巣、自殺するつもりがいつの間にか空き巣と同棲
しちゃった彼女、謎の男・黒澤ほか、個性的なキャラクター
と軽妙な会話が笑えます。笑って読んでいるうちに作者の
罠にはまり、ラストは泣かされてしまうという傑作。
但し、三人称の文体で主観が不規則に入れ替わるため、
場面や視点を掴みにくいことが多々あります。笑いも
ちょっとコント的すぎるところもあるかな。全体にあまり
練れていない印象です。

というわけで、まず「フィッシュストーリー」を本屋さん
で数ページ立ち読みして、気に入ったら購入して家で
ゆっくり読むことをおすすめします。何しろ、唸ったり
笑ったり泣いたり、とても人前ではお見せできない読書に
なりますから。

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【2009/11/21 08:53】 | おすすめ/本
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