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自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
 イギリス留学中の漱石は、毎夜現れる亡霊に困り果て、
評判の名探偵シャーロック・ホームズの元を訪れた。

ところが実際に会ってみると、ホームズはむしろ迷探偵。
例えば、女性の扮装をして歩き、「周りは誰も自分に
気付かない、自分は変装の名人だ」と言って悦に入って
いるが、その実、体格の良すぎる成人男性のあからさまな
女装に、周囲が関わりを持ちたくなくて目を伏せていた
だけ、という始末。突飛な思いつきで周囲を振り回す
奇人変人だった。

しかし、関わりを持ちたくない、勉強に専念したいと
いう漱石の願いとは裏腹に、ホームズは容赦なく彼を
事件に巻き込んでいく。

「ホームズ=ボケ、漱石=突っ込み」というユニークな
図式で送る、笑いとあたたかみに満ちた推理短編集。

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昨日一昨日に続いて、島田荘司の小説の紹介です。

島田荘司作品としてはややマイナーな一冊ですが、
「シャーロック・ホームズ×夏目漱石」という、推理
小説ファンのみならず、活字ファンなら心躍らずに
いられない設定で、ひそかに人気のある一冊です。

ワトソンによる「小説」パートと漱石による「日記」
パートが交互に登場するかたちで小説が構成されて
おり、「小説」の中では頭脳明晰に描かれるホームズが、
その実どんな奇行で周囲を悩ませていたかが「日記」で
明かされるという構図。世界的探偵小説を真っ向から
パロディにしており、気持ちよく笑えます。

もちろん島田荘司らしく、奇抜な見た目の事件と思いも
寄らない現実的な解決が用意されています。推理小説と
しても読み応えばっちり。

奇人ホームズに振り回される漱石が、それでも少しずつ
彼と打ち解けていく、人間ドラマ的な側面もあります。
ラストシーンのホームズの振る舞いには、思わず漱石に
感情移入して涙ぐんでしまうほど。

パロディであり、推理小説であり、人間ドラマである
贅沢な小説を、古き良き英国情緒をたっぷりとまぶして
展開する島田荘司の圧倒的な筆力。
夜の長いこの季節にゆったりと楽しむのに最適の一冊です。

残念ながら本屋さんに新刊では並んでいないようですが、
本好きならまず間違いなく楽しめますので、ネット通販
なり図書館なり、取り寄せて読むことをおすすめします。

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【2009/12/03 08:43】 | おすすめ/本
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