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自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
愛って何?結婚って何?
不倫生活真っ只中のさゆりは問いかける。
愛?わからん!結婚?生活だ!
平々凡々な結婚生活を送るえりこは答える。

愛がどーした。言うな語るな。
ただ…。

人生の中のほんの小さな契機とそれを支える生活を
淡々と描いた表題作ほか五編、普通の人々が出会う
ちょっとした事件を優しく描いた短編集。

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いわゆるレディースコミックというジャンルで、地道な
良作を産み続ける入江紀子の読み切り短編集。
レディースコミックというと、「少女漫画を描くには感性が
古い、或いは画力が足りない作家が、エロや嫁姑といった
読者ニーズありきの作品を描いている」というイメージを
勝手に持っていましたが、今はいい作家が沢山いますね。
かなりシビアな人生観を持っている作者ですが、この
単行本に関してはそれがポジティブなほうに出ていて
好きです。

私が一番好きなお話は「サバイバーズ」。小さいころに
おじいちゃんに買ってもらったランドセルのおかげで
交通事故を免れた主人公。「何かに守られた」「生きること
と死ぬことは裏おもて」と幼な心に刻みこみ、やがて大人に
なります。大人になった彼女が直面するのは、夫が飛行機
事故に巻き込まれたかもしれない、という事態。
回想を交えて描かれる彼女のパニックぶりもかなりリアル
で感情移入できるのですが、それ以上にラストが良い。
ネタばれすると、夫は助かるのですが、助かってめでたし
めでたしではなく、そこで小さいころのエピソードが
生きてきます。また、彼女が「ありがとう」と伝えたい、
とふとある人を思うくだりも秀逸。単純な夫婦の愛情もの
ではなく、「生と死」という大きなテーマを扱っている、
にも関わらず、目線はあくまで低く、語り口は淡々として
いる。このバランスが大好きです。

ほかの作品も簡単に紹介しますね。

「月も星も出ている」
駆けだしフリーライターの彼女と編集者の彼。彼女が念願の
映画の仕事に関わりだしたことから、大御所字幕翻訳家で
『若い男大好き!若い女毛嫌い!』の宝田花子に目をつけ
られ、数々の嫌がらせを受けるが…。
悪役の宝田花子までも暖かい目線で描くタッチがよい。

「TVママ」
ひみかのパパはお金持ち、ママは美人でなんでもできる。
でも、ひみかのほんとうのママはTV。TVだけがひみかの
相手をしてくれる…。
複雑に束縛しあう夫婦の結末を幼い娘の目線から描いた
スリラー。「サバイバーズ」と同じく後日談が素晴らしい。

「夜行性マリア」
バー「シェルター」の裏の顔は『シェルター屋』。身を隠し
たい人に隠し部屋を提供し、時には『夜逃げ屋』を紹介し、
時にはただ家に帰す。喧嘩がめっぽう強いタクシー運転手
カシアス、謎の美女マリア、オーナーのユダの三人が活躍
する都会派アクション。
に、見せかけて、依頼主である未婚の母とマリアに語らせる
「産む」こと、「産まれる」ことに関するメッセージがきっちり
レディースコミック、きっちり意欲作。
シリーズ化してくれたらいいのになあ。

もう絶版のようですので、古本屋で見かけたらぜひ。

ところで最近入江紀子の新刊が出たのですが、これは頂け
なかった…ニーズありきの作品でした。この一冊を読んで
気に入った方は、同じころに出版された作品に進むことを
おすすめします。

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【2009/12/22 08:54】 | おすすめ/漫画
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