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自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
道でたまたま凱旋軍に行きあった「余」が、その風景から
戦死した友人へと思いを馳せ、ついには友人の秘められた
恋を解き明かす、自伝ふうの短編。

様々な本に収録されていますが、この文庫がお手軽です。
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表題の短編を薦められて読みましたが、一冊の文庫本と
してもとてもよかったです。というわけで、短編「趣味の
遺伝」のおすすめではなく、文庫「倫敦塔・幻影の盾」の
おすすめとして書きますね。

いやはや、私の読解力・語彙力を遥かに上回る文章でした
が、辞書を引き引き、ネットで調べ、と学生が課題に取り
組むようなやり方で格闘して読むのがとても楽しかった
です。やはりたまにはチャレンジが必要ですね。

表題の意味は、「異性の好み、運命的な恋の相手という
ものは、何代か前の祖先と似通っているのではないか」
という漱石の仮説のようなものです。物語の序盤はまるで
表題と関係ない話が続くのですが、凱旋軍に行きあって
ふと涙を流す主人公の心情に時代がにじみ出ており、
戦争を知らない世代が読んでも共感できるものだと思い
ます。中盤、本題に入り、二行くらいで言えることを二頁
以上使ってくどくどと述べて読者を辟易させ、終盤は
一気呵成の決着ぶり。中盤に耐えられれば(笑)非常に
面白い物語です。

ほかの収録作品で私が特に好きなのは、「韮露行」。
アーサー王伝説のラーンスロットとグウィネヴィア王妃の
道ならぬ恋を文語調で描いたこの短編の美しさ!やはり
これは文語調でなければ。しかし前置きで漱石が「本家
が書いたものはラーンスロットもグウィネヴィアも品が
ないんだよねー。だから俺が書き直してみたよ」なんて
堂々と言っているのには吹き出してしまいましたが。

アーサー王ものがもう一篇入っていて、そちらも美しい
です。ほかにも倫敦留学中の話や、婚約中の男女を描いた
ほのぼのとした短編など、なかなかバラエティに富んで
います。

円卓もの好きの方、
ハムレットは「べきかべからざるか」と言うべきだという方、
夏目漱石の長編しか読んだことがない方、
三島由紀夫「永すぎた春」が好きな方におすすめします。

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【2010/01/08 08:52】 | おすすめ/本
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