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自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
ユキは日本人の母とフランス人の父とパリで暮らす
九歳の女の子。ある日両親の離婚により東京へ
引っ越すことになってしまう。どうしても日本へ
行きたくないユキは、親友のニナと一緒に家出を
するが・・・。

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現在劇場公開中の作品。

題名は「ユキとニナ」ですが、内容は「ユキ」です。
ユキとニナがじゃれあう可愛らしいシーンは多々
ありますが、それがメインではありません。
また、非常に淡々と物語が進むため、泣ける映画が
観たくて行くと肩透かしを食らわされると思います。

ユキ役のノエ・サンピも「天才子役」と喧伝されて
いますが、大して演技はしていません。シーンに
そぐわないと思われる表情をしていることもあるし、
なんというか、常にそこにいるだけ。「天才子役」
という言葉のイメージに合うのはどっちかというと
ニナ役のアリエル・ムーテルのほうじゃないかしら。
彼女の爆発力は凄いです。いい女優さんになりそう
です。

ではこの映画のどこが凄いのか。
ノエ・サンピのどこが凄いのか。

ノエ・サンピの素晴らしさは、その存在そのものに
尽きます。諏訪監督が「ルノワールの絵画から抜け
出てきたようだ」と評した通り、人間というより
「彼岸」の存在のよう。どのシーンでも、どんなに
遠景で映っていても、彼女の存在は際立っています。
ノエ・サンピのこの先のキャリアなんて想像も
つかない、彼女はユキそのものなんです。

この映画は、ユキという九歳の女の子、まだ現実と
ファンタジーの狭間に生きている年頃の、なかでも
特別ファンタジックな精神世界を持つ少女の、その
精神世界を忠実に写し取った、ドキュメンタリーの
ような味わいを持ったフィクションなのです。
観客は泣くでも笑うでも感動するでもなく、ただ
ノエ・サンピとユキによって、「あちらの世界」に
連れて行かれるのです。

ところでディテールは非常に宮崎駿っぽいです。
ユキの住むアパルトマンは「カリオストロの城」に
出てきそうなレンガ作りだし、ニースでのシーンは
「となりのトトロ」そのものだし、ユキが森を
抜けてたどりつく先は「千と千尋の神隠し」の風景
のよう。行った先で飲み食いするなど、主人公の
行動も宮崎駿的な部分がちらほら見られました。
考えすぎかな。

というわけで、宮崎アニメが好きな方、
ルノワールの絵が好きな方(ノエ・サンピの
横顔のショットはまさにルノワール!)、
美しい風景が観たい方、
分かりやすい物語より、終わった後あれこれ
考える物語を観たい方におすすめです。

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【2010/01/26 08:53】 | 撮影日記(映画)
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