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自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
夏目漱石や芥川龍之介から中学の同級生まで、
内田百けんが心にかける人物について、或いは
随筆として、或いは小説として綴った掌編・短編。

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どうも追悼文が多いので、読み進めるうちに
「あの人も死んだ、この人も死んだ」という気分に
なって若干落ち込むのですが、落ち込んだらまた
落ち込んだなりに、つまり百けん先生の落ち込み
に寄り添って一緒に落ち込むのが楽しくもある
一冊です。

勿論、愉快な部分もたくさんあります。特に、教師
時代の、学生たちとの思い出話には、学生だった
ことのある人(つまり誰でもですが)なら、にやにやが
止まらないはず。学生同士のいたずらを、内心では
もっとやれと思いながらしかめっ面でやり過ごす
百けん先生。教壇を降りた途端、まるで兄貴分の
ように生徒たちに慕われて、今度は一緒になって
外でいたずらをして回る百けん先生。普段の百けん
節のひねくれた部分が少しなりをひそめ、その分
内田百けんの無邪気さや当時の楽しい気持ちが
読者まで楽しくさせてくれます。で、そんな楽しい
随筆の中にふと「夭逝した〇〇」なんてふうに生徒
の名前がさらりと紛れさせてあるものだから、余計
百けん先生の悲しみが胸に迫るのです。

私のおすすめは以下三篇。

「漱石先生臨終記」
師である夏目漱石の死去に寄せて書かれた短編。
臨終前後のことだけでなく、十代の頃、まだ岡山に
いてひたすら漱石に憧れていた頃に始まって、
師との数十年に渡るかかわりがユーモアと情緒を
持って描かれています。

漱石が乗った列車が近くの駅を通ると聞いて友人
と連れ立って出かけ、しかし一向にそれらしい人が
見当たらないので、ついには口ひげのある「まあ
それっぽいかな?」という人を窓越しに見つけて
「あれじゃないか」
「あれに決めよう」
と言い合って拝むエピソード。例えば自分にとって
のビートルズやコールドプレイに置き換えて読むと、
可笑しい中にも非常な親近感が湧きました。

その後初めて漱石と対面したのにろくに喋れなかっ
たエピソードや門下生時代の話を経て、時制は
現代に戻りお葬式、このお葬式でのエピソードが
また・・・多くは言いますまい。ただ、私はうっかり
外で読んでいてボロ泣きし、大変困りました。


「凸凹道」
夭逝した中学時代の同級生について、彼が引越し
て行ったときのエピソードを中心に綴った掌編。
まるでモノクロ映画のように抑制の効いた叙情性
が素晴らしいです。中学以来会っていない友人の
顔がいくつか浮かびました。

「乱れ輪舌FOT」
雑談のようにあちらこちらへ飛ぶ短編のラストに、
亡くなった息子についての思い出話が登場します。
この段の筆致が一段と他の追悼記よりも抑えて
あるところが、百けん先生の恐ろしい才能でもあり、
また愛情の深さの裏返しでもあり。

文庫にしてはちょっと高いのですが、上記三篇を
ぱらっと読んでお気に召しましたら是非。
尚、夏目漱石ファン、芥川龍之介ファン、森田草介
ファンは必携です。

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【2010/05/13 08:21】 | おすすめ/本
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ツル吉
内田百せんせいも読まれるのですね~!
ホントに読書家だなあ~。

すごく読んでみたくなりました。

そもそも題名がいいじゃないですか!!

ツル吉さんへ
おもちゃ
そうそう、題名がいいですよね!
題名で衝動買いです!

おすすめなので、ぜひ読んでみてくださいね^^

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コメント
この記事へのコメント
内田百せんせいも読まれるのですね~!
ホントに読書家だなあ~。

すごく読んでみたくなりました。

そもそも題名がいいじゃないですか!!
2010/05/14(Fri) 01:40 | URL  | ツル吉 #-[ 編集]
ツル吉さんへ
そうそう、題名がいいですよね!
題名で衝動買いです!

おすすめなので、ぜひ読んでみてくださいね^^
2010/05/16(Sun) 21:23 | URL  | おもちゃ #-[ 編集]
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