自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
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ある日家に帰ると、父母はむごたらしく殺され、
姉の足には謎のうろこが生え始めていた。

異形の者になりつつあってもなお美しい姉。
妹は強い反発を覚えながらも、父の最期の言葉
に従って、幼馴染たちと協力して姉を連れ海へと
逃げる。

それぞれ心に傷を抱えた少年少女が行き着いた
海で見たものは。

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綺麗な絵で恐ろしい情念を描くのが上手い作家と
いえば、私にとっては大橋薫がダントツナンバー
ワンだったんですが、それに並ぶというかさらに
えぐいというか。

大橋薫の書く女の子は綺麗なお姉さん系ですが、
この人の絵はこれとかこれで分かるとおり純真で
ラブリーな童顔美少女系。この絵でどろっどろの
ラブ&セックスとか描かれると、なんだか背筋の
ぞわぞわが止まらないイヤ~な(つまり極上の)
ホラーになるわけです。

表題の「姉さんゴーホーム」は読後感爽やかな
ロードムービーものですが、主人公は才色兼備
の姉に愛憎ぐっちゃぐちゃの感情を抱えてるし、
幼馴染も虐待だの援助交際だのいじめだの、
これでもかってほど闇を抱えた子ばっかり。唯一
真っ当に育ってる男の子すら、物語中盤で初恋
の君である主人公の姉に逆レイプされるし、何も
そんなに登場人物たちをいじめなくてもいいじゃ
ないの作者さん、とたしなめたくなるほどです。

続く「シンパシー・フラワーズ」では、小さい頃
好きな女の子の援助交際を目撃して以来恋愛が
できない男の子の話。もうその時点でひどいわけ
ですが、大学生になってその女の子と再会し、
彼女の過去を受け入れる気持ちになって彼女と
結ばれかけ・・・るのにその後がひどい。容赦ない。
彼女と付き合うためにガールフレンドを振る過程も
描かれますが、これがまた主人公のくせに汚くて
リアルにひどいです。大学生男子ってこうだよね。

極めつけは「キオクの花」。その日一番心を揺さ
ぶられた出来事を忘れてしまう、という奇病に
かかった主人公が、自分の心を一番動かす存在
である婚約者のことを忘れないために取る行動
が、まず、自傷。この自傷シーンがものすごく
痛そう。デッサンのしっかりした柔らかそうな女の
人の腕にざっくり傷がついているカットといい、
血が滴る表現といい、手書き文字の効果音と
いい、痛いの苦手な私はこの時点で一旦読むの
休憩しました(笑)で、次に彼女が取る行動が・・・
これ以上はネタバレなので秘密ですが、自傷
以上に痛々しい行動です。

というわけで痛くてつらくてしんどい話ばっかりな
わけですが、話を痛くてつらくてしんどくしている
絵柄そのものがまた、痛くてつらくてしんどい話
の救いになっているわけで。各話にわずかずつ
挿入されるささやかな幸せの回想が、この石田
敦子という漫画家のなめらかな描線のふわふわ
愛らしい絵柄で描かれると、『この思い出だけで
どんなにつらい人生でも生きていける』レベルの
光り輝く回想シーンに。で、この回想シーンの
美しさが現実の残酷さをいや増すという、まさに
永久機関的ループです。

鬱っぽい展開やセックス描写が苦手な方には
おすすめできませんが、それ以外の方には、
普段の読書傾向を問わずぜひ読んでもらいたい
完成度めちゃ高の短編集です。あ、セックス描写
といっても、あくまで物語上必要な小道具なので
直接的な表現はほとんどないです。エロ目的で
読むと肩透かしくらうと思います。ていうかそんな
目的で読まないで。

真面目に読んで真面目に楽しんで真面目に
怖がって欲しい、イチオシホラー作品です。

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【2010/06/01 07:53】 | おすすめ/漫画
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