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自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
俺は私立探偵。といっても、浮気調査や迷い猫探しなんて
チンケな事件は扱わない。俺の元に舞い込む依頼は、誘拐、
連続惨殺事件に、ボディガードなどのクールな事件。

…のはずなんだけど、何故かいつも対象が犬や猫!
ドーベルマンの誘拐に野良猫の連続殺害、シーズーのボディ
ガードなんて引き受けて、一体俺は何をやってるんだ!?

京都の町を舞台にした、ユーモアのちペーソス、ところにより
サスペンスな連作短編集。

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構造をバラしてしまえば、よくある私立探偵もののターゲットを
動物に変えただけ。でもこれが非常に面白い効果を生んでい
ます。

ひとつめ。全体に漂うドタバタ感。誘拐事件ひとつとっても、誘拐
されたのがドーベルマンなので、探偵が奮闘すればするほど
ずっこけというかおとぼけな空気感になっていきます。あ、人間よ
り動物の命のほうが軽いとか、そういう主張をしているわけじゃ
ないですよ。探偵が「なんでドーベルマンの誘拐なんか…」という
気持ちで捜査をしている、聞き込みをしたりする相手も「動物の
話でしょ?」という態度、人間相手じゃないから警察も出てこない、
というわけで、物語自体が緩いというか悠長なんです。

ふたつめ。上記の通り警察が出てこないので、探偵が自由に
動けます。本来警察がやるようなことまで主人公が手を出して
駆け回ります。主人公が自由に動けるということは、思わぬ方へ
話が転がりやすいわけで、展開が読めなくて面白いです。

みっつめ。物語のアップダウンが大きいです。犯人は当然ながら
人間なわけで、犯行にはそれなりの(というか、我孫子武丸らしく、
それなり以上にシビアな)動機があります。前半のどたばた感の
おかげで、真相が明かされるクライマックスがかなり衝撃的に
感じられます(ディテールも我孫子武丸らしくかなり残酷だったり
うすら寒かったり)。で、エピローグでまたどたばたな日常に戻る
という、この繰り返しがなかなかテンポ感あって良いです。

連作の割にはキャラクターがあまり濃くないというか、結構類型
的なところは残念かなあ。

キャラクターやトリックではなく、犯人が抱える闇という視点の
ミステリーが好きな方におすすめです。定価でもおすすめしたい
ところですが、文章が上手すぎてあっという間に読めてしまうので、
中古で350円なら買い、といったところです。京極夏彦に「タケマル」
扱いの我孫子武丸が犬を扱った短編を書いている、というだけで
受けてしまうミステリーおたくなら定価でも。

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【2010/07/08 07:47】 | おすすめ/本
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No title
藍色
先日は、ありがとうございました。
こちらにもトラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

藍色さんへ
おもちゃ
これも読んでらっしゃるんですね!
読書傾向かなり近いかも?
トラックバックありがとうございました。
こちらもさせていただきます!

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コメント
この記事へのコメント
No title
先日は、ありがとうございました。
こちらにもトラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
2010/08/05(Thu) 13:27 | URL  | 藍色 #-[ 編集]
藍色さんへ
これも読んでらっしゃるんですね!
読書傾向かなり近いかも?
トラックバックありがとうございました。
こちらもさせていただきます!
2010/08/06(Fri) 07:48 | URL  | おもちゃ #-[ 編集]
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