自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
クジラに会いたい!
突き詰めればそれだけの理由で、カメラマンを連れ、
「調査捕鯨の取材」という名目で捕鯨船に乗った著者が
船の上の半年間を綴ったノンフィクション。

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良い意味で軽薄、と、ひと言で評するならそう言いたい
一冊です。

クジラが好き。といっても心から愛してるとかすごい知識
があるとかじゃない。ただ、でっかくてかっこいい、だから
見てみたい。

捕鯨はいいこと?悪いこと?よく分からない。

調査捕鯨って何?予備知識は何もない。ただ、記者として
取材してみたいと思っていたら、チャンスがやってきた。

そんな著者が見たまま、感じたままに、鯨と鯨にまつわる
人々を描いて行きます。

「調査捕鯨」と言いつつも、捕鯨に携わるのは昔ながらの
漁師たちで、彼らは捕鯨を「漁」と呼ぶ。その違和感。

船にいるのは漁師たちだけではありません。

何かかっこいいことやりたい。そんな気持ちで捕鯨を行う
会社に就職してきた若者たち。

鯨が見たい、鯨やイルカを「彼ら」と呼ぶ、鯨への愛情に
溢れた調査員の青年は、捕鯨に立ち会うたびに表情を
失くし、部屋に閉じこもりがちになる。

イギリス人ながら、「本当の調査捕鯨を紹介すれば国の
人々も理解してくれるかも」とカメラ片手に乗り込んで
きたジャーナリスト。

そんな様々な人々と船の上で生活し、感じたことを素直
に書いているという印象。鯨が美味しければ美味しいと
書き、かわいそうに感じればかわいそうと書き、もっと
捕ってもいいと思えばそう書く。悪く言えばブレてばかり
なのだけど、たぶんそのときの気持ちを正直に書いたら
そうなったのであり、正直にブレているおかげで読者も
捕鯨船の生活を追体験できます。

だから、「良い意味で軽薄」。
捕鯨を批判する立場にも擁護する立場にも立たないのが
この本の最大の特徴です。漁師たちに深く同情して「捕鯨
は日本の文化だ」なんて感じ入る割には、グリーンピース
の職員の話を聞いて「うーん一理ある」なんて唸っちゃっ
たりするところなんか最高に面白いです。

「良い意味での軽薄さ」は、鯨との遭遇シーンで最大限
に発揮されます。捕鯨の意義とか未来とか問題点とか、
そんなのうっちゃって、鯨と遭遇したら鯨に夢中!描写の
上手さももちろんあるのですが、著者の「鯨に会えた!」
という喜びがダイレクトに伝わってきて、「海底二万里」の
ようなスペクタクル!

というわけで、鯨に興味がある方、捕鯨に興味がある方
だけでなく、職人が好きな方、人間ドラマが好きな方、
さらには海洋ロマンものの小説が大好きな方にも!
文庫なら定価でも買いです!

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【2010/10/06 07:59】 | おすすめ/本
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