自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
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いじめられてるわけじゃないけどなじめない。
学校ではめんどくさくて恥ずかしいやつ、それがあたし。
だけどある日弾けた。
人の目を気にしないでなんでもできるようになった。
なんでもできるあたしがいつも見ているノート、そこに
書いてあるのは…。(「白い本」)

地球は自転していて、公転もしていて、さらに宇宙は
膨張し続けている。そう知ったとき、オレは丸が書けなく
なった。「書けるよ」とにこにこ笑ったゆかちゃんは、
オレよりクラスの女の子と遊ぶようになって、車いすの
オレのにーちゃんは新しい彼女ができて家を出ていき
たがって、オレはますます丸が書けなくて。(「まる。」)

テーマやあらすじなんかで要約できない安永ワールド
全開!ままならないような自由なような気持ちを描いた、
雑誌未掲載の受賞作を含む初期短編集。

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テーマやあらすじで要約できないものを一番上手に
扱う媒体は映画ではないかと思います。だから他の
媒体でそれをやってのけたときに、「映画っぽい」という
言葉がほめ言葉になるのかなって。

でも、映画でできることは映画でやるのが一番面白い。
だから安易に「映画っぽい」ってほめたくないと、最近は
思います。

この短編集も、どれもこれも「映画っぽい」と思います。
でもね、面白さのポイントはそこじゃないんです。むしろ、
映画っぽさから出発して、一番大事なところがきっちり
「漫画らしい」、そこがこの短編集の良さなんです。

上には面白そうに紹介しやすい作品を紹介したけど、
紹介しづらい作品こそ面白い。

たとえば雑誌初掲載作の「くそがき」。同い年の子に
なじめなくて、さびれた雑貨屋のうらぶれたおじさんに
なつく女の子の話。「早く大人になりたい」とつぶやく
冒頭はすごく映画的なんだけど、精神的に要となる
あのシーンは、映画でやるとなったらものすごくお金を
かけていいCGを作っても表現しきれるかどうか。

それから「待ち人」、幼馴染みが久々に帰省してくる
様子を田舎の風景をふんだんに盛り込んで「映画!」
な感じで描いているけど、クライマックスのアレを映画で
やったらさすがにえぐすぎる、そこをちょっと幼い絵柄と
きらきらしたトーンワークであっさりカバーして青春もの
らしく仕上げている。

そんな楽しみ方をするのは邪道かもしれませんが、
「すごく映画っぽいのにすっごく漫画らしい!」と感心
しながら読みました。

巻末のしりあがり寿と著者の対談も面白いです。
対談がっていうより、しりあがり寿が言うことがいちいち
面白い。「一貫性なんて戦略みたいなものだ」とか。

漫画好きで映画好きな人におすすめしたい一冊です。

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