自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
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大阪に住む姉・巻子とその娘の緑子が二泊三日で
泊まりに来た。目的は巻子の豊胸手術だと言う。
久々に会った巻子は恐ろしく痩せて老けており、
緑子は緑子で一言も口をきかず会話は筆談で
済ませる。居心地の悪さを感じながらも、妹として
叔母として、精いっぱい二人を迎え入れる主人公
だが・・・

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「わたくし率 イン 歯ー、または世界」はどうしても
生理的に受け付けなかったのですけど、この中編は
すこんと読めました。この人の混乱したような文体は
その文体だけでパワーがありすぎるので、病んだ人
が主人公だとその病んだパワーがまともにぶつかっ
て来すぎてしんどいのです。また、混乱したような、
というのが、つまり、人の頭の中で渦巻いている混沌
を整理しないで並べ立てたような、混線しまくった
複数の秩序のようなものなので、頭の中で起きている
ことだけをずうっと書かれるとこれまた結構しんどい。
その点、「乳と卵」は主人公が傍観者で、巻子と緑子
がどんどん小事件を起こすので読みやすかった、と
いうか、ぴったり来たのです。

ある程度年をくった女として巻子の気持ちも分かる、
かつて少女だった者として緑子の気持ちも分かる、
でもどっちに対しても「どないやねん」とも思っている
主人公の立ち位置が、あるいはぴったり来たのかも
しれません。

巻子は物語としては主人公の姉なのですけど、現実
では母でもあり得るし祖母でもあり得るし、自分自身
でもあり得るなあと思いました。緑子も同じかも。

小事件がどんどん起こりつつも、割と地味な感じで
物語は進み、割と地味な感じの物語にしては派手な、
だけどやっぱり地味な感じのクライマックスを迎え
ます。このクライマックスがとてもいいです。

たとえば、友だちとその子どもと過ごしていて、ある
瞬間、実の母親(もしくは父親)である友だちよりも
その子どもの気持ちが理解できるなあと思ったことが
ある、子どものいない大人におすすめしたい本です。

ところで併録の「あなたたちの恋愛は瀕死」は生理的
に受け付けないのでした。

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