自主映画や小劇場を中心に活動する俳優・外山弥生の記録です。
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黒船に一番乗りした侍が、出世を遂げることなく町の床屋になる話。
主に追われた侍が、刀も使わず血も流さず主の城を壊滅させる話。
臆病な侍が、殿様のおまる持ちを言いつかり戦場に連れだされる話。

歴史の陰に埋もれた、おかしな可笑しな可哀しな、侍の話。

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図書館で気まぐれに借りたこの本が当たりで、もう。

基本的に史実に基づいているらしく、歴史トリビア的な面白さも
勿論あるのですが、物語としての面白さが半端ない。

たとえば黒船に一番乗りした侍の話。勢いだけで黒船に乗り
こんだはいいけれど、その後の時流に乗るだけの頭の良さは
なく落ちぶれた彼は、それでも晩年、黒船の船員にもらった
懐中時計を持っていたおかげで、鐘つきに時間を知らせ鐘を
つかせる役目をもらいます。それまで日の出日の入りに合わ
せてついていた鐘を24時間制に合わせる役目、小役人では
ありますが、文明開化の象徴でもあり、非常に晴れがましい
気持ちで彼は職に就くのですが、だんだん時計が古くなって
狂い始めます。それでも直す術もない、自分のたった一つの
よりどころである時計の狂いを認めることもできない。
でたらめな時間に鐘をつかせ続け、でたらめな時間に町が
従い続けるラストシーンはぞくっとする怖さです。

臆病で、できれば戦場になど行きたくない、恋女房と家に
いるのが何より好きな侍が殿様の携帯トイレ係として戦場に
行く話のラストも好き。「がんばれ元気」でパンチドランカーに
なったボクサーが砂浜を歩いていくシーン、あのシーンを
読んだときのような涙が出ました。

一話だけ、最後に、お伽話のような短編が収録されています。
奇病にかかり顔中かさぶたに覆われた男が、病気が治ったら
別人のような美男になってしまい、誰にも本人だと気づいて
もらえないというお話。現代のように身分証明書があったり
鑑定の手立てがあるわけではない時代に、しかも侍の身分で
こういうことが起こるとどうなるか。さすがにこのお話は100%
フィクションだろうと思いますが、寓話としてとても面白かった
です。あとね、この男がとても奥さんと仲がいいのですけど、
その描写がいいんですよ。

白土三平、中沢啓治、小山ゆうの漫画が割と好きで、でも
小説は読まないよ、という方に試しに読んでみてほしい一冊
です。
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